講師 中村 優子
広島大学病院 放射線診断科 特任講師
平成15年卒
日本医学放射線学会放射線診断専門医
米国国立衛生研究所(Molecular Imaging Program, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, National Institutes of Health)です。
約6年前です。
大学院に入学して間もないころに卒業後の次のステップを考え、海外留学を志そうと考えるようになりました。
日本の常識が全く通用しない
アメリカでの経験が、私の貴重な
財産になると実感しています。
特任講師 中村 優子
海外留学は長期に医局を不在にしてしまうため、医局の先生方にご迷惑をおかけすることになります。このため少しでも意義のあるものにしたいと考えていました。
今の自分に足りないもの、日本では難しいこと、そして何より次の画像診断に役立つと思われる新しい分野にチャレンジしたいと思い、そのような分野を模索していたところ、「分子イメージング」に行き当たりました。
ちょうど同じ時期に北米放射線学会で米国国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)で分子イメージングを主として活躍されている小林久隆先生の講演を聞くチャンスに恵まれ、半分だめもとで講演後の懇親会で小林先生に留学のお願いをしたところ、快諾していただきました。とても運がよかったと思います。
実際にアメリカで生活することによって、日本では想像もできなかったアメリカの実情を体験できたことです。日本が非常に細かい部分までよくできている国であることを痛感しました(笑)。同時にアメリカのよい意味でのおおらかさに救われたりもしていました。
また、私がお世話になったNIHにはあらゆる国の人々が働いていたため、様々な国の人々と交流できたことは非常に刺激的でしたし、大変興味深いものがありました。この国の人たちはラボの方を含め、基本的にとても優しく、お互いに挨拶をよくします。エレベータで一緒になっただけの全く見知らぬ人が気さくに話しかけてくれたり、そんな何気ない会話が私の日々を明るくしてくれました。これはアメリカのとてもよい文化だと思います。
当たり前ですが、日本での常識が全く通用しません。このため最初の1か月の生活のセットアップにはかなり苦労を強いられました。そして言語の違いはやはり大きな壁で、言われたことがわからない、そして言いたいことが伝えきれないもどかしさは並大抵のものではありませんでした。しかし、この困ったことも含めて、貴重な経験となったと思いますし、最終的にはきれいな会話にならなくても、なんとかコミュニケーションをとるというガッツが身に付いたように思います。残念ながら、英語は上達しないまま留学が終了してしまいましたが・・・。
細かい話をするときりがないのですが、とても簡単にいうと、細胞を育てて顕微鏡で観察したり、育てた細胞をマウスに植えて、マウスの画像を撮影したりしていました。画像検査の中にはMRIも含まれていて、MRIは自分で撮影していました。
日本での放射線科医としての仕事とはかけ離れたことをやっているように思われるかもしれませんが、顕微鏡、MRI含め、得られた画像を解析し、その意義を見つけ、臨床につなげていくことが最終目標という意味ではこれも一つの「画像診断」だと思っています。
海外留学は、生活面を含め何から何まで一新され、今までの常識が吹っ飛んでいきます。特に最初の数か月は慣れないことだらけで、ストレスも多いです。私も最初はかなり路頭に迷いましたが、最終的には、アメリカという国を楽しめるようになり、今では留学して本当によかったと感じています。苦労を含めたすべての経験が将来きっと私の貴重な財産になるだろうと思っています。
決して楽な道のりではないですが、私を含め、留学を終えた先生方はみなさん口をそろえて「留学してよかった」と言われています。 みなさんもちょっと腹をくくって!新しい世界へ、留学という分野に飛び込んでいただければと思います。そしてこれからはそんな後輩を私が少しでもサポートできればと思っています。